空き家を相続したり、住み替えで誰も住まなくなったりした家をそのままにしておくと、想像以上の維持費がかかることをご存知でしょうか。誰も住んでいないからといってお金がまったくかからないわけではなく、むしろ建物の劣化を防いだり、税金を納めたりするために継続的な支出が必要になります。年間を通してみると、数十万円単位の出費になることも決して珍しくありません。この記事では、空き家の維持費として具体的にどのような費用が発生するのか、そしてそれらの費用を少しでも抑えるためにはどのような対策をとるべきなのかを詳しく解説していきます。将来的に空き家をどうするべきか悩んでいる方は、まずはどのくらいのコストがかかるのかを正確に把握することから始めてみましょう。
不動産を所有している限り、誰も住んでいない空き家であっても毎年必ず納めなければならないのが固定資産税です。さらに、市街化区域内に空き家がある場合は都市計画税も同時に課税されます。一般的に住宅が建っている土地は特例制度によって税金が安く抑えられていますが、それでも毎年の確実な出費となります。とくに地価が高いエリアに空き家を持っている場合、年間の税額だけでもかなりの負担になるでしょう。納税通知書は毎年春頃に送られてきますが、これらを支払わずに放置していると延滞金が発生し、最悪の場合は財産を差し押さえられるリスクもあります。空き家を維持していく上で、この税金の負担は絶対に避けては通れない基本的な維持費のひとつといえます。
空き家は人の目が行き届かないため、放火のリスクが通常の住宅よりも高くなるといわれています。また、台風や落雷などの自然災害によって建物が大きなダメージを受ける可能性もあるため、万が一に備えて火災保険や地震保険に加入し続けることが強く推奨されます。ただし、空き家の場合は通常の住宅物件ではなく一般物件として扱われることがあり、その場合は保険料が割高になるケースも少なくありません。保険料を節約しようと解約してしまうと、もし隣家に延焼してしまった場合や建物が全壊してしまった際に、すべての損害を自己負担で賠償しなければならなくなります。安心を買うための必要経費ではありますが、毎年の維持費としては決して無視できない金額になります。
空き家をただ置いておくだけでは建物はすぐに傷んでしまうため、定期的な管理が必要不可欠です。それに伴って発生するランニングコストも維持費の大きな割合を占めます。たとえば、月に一度でも空気の入れ替えや掃除をするためには、現地へ向かうための交通費がかかります。遠方に空き家がある場合は、新幹線や飛行機、高速道路の料金などがかさみ、年間で計算すると数十万円の負担になることもあるでしょう。自分で管理しきれない場合は専門の業者に頼むことになりますが、そのサービス利用料も毎月の固定費として家計にのしかかってきます。空き家はただ持っているだけでもお金が流出していく資産であることを強く認識し、日々の管理にかかるコストをシビアに計算しておく必要があります。
誰も生活していない空き家であっても、電気や水道の契約を完全に解約してしまうことはあまりおすすめできません。なぜなら、定期的な清掃や換気を行う際には電気が通っていたほうが便利ですし、水道の水を定期的に流さないと配水管のトラップの水が蒸発してしまい、下水からの悪臭や害虫が室内に侵入する原因になるからです。そのため、最低限のアンペア数や契約内容に変更したうえで、電気と水道を契約したままにするケースが一般的です。まったく使用していない月であっても、基本料金は毎月必ず発生するため、年間を通せば数万円の維持費となります。少額に思えるかもしれませんが、長期間にわたって所有し続けるとなると大きな金銭的負担となってきます。
建物の内部だけでなく、敷地内の外構部分をきれいに保つための費用も重要な維持費の一部です。とくに春から夏にかけての時期は、驚くほどのスピードで雑草が生い茂り、庭木の枝も伸び放題になってしまいます。これらを放置すると、景観が悪化するだけでなく、不法投棄の標的になったり、スズメバチなどの害虫が巣を作ったりする原因になります。隣の敷地に枝が侵入してしまい、近隣住民との深刻なトラブルに発展するケースも後を絶ちません。自分で草刈りや剪定を行うのが難しい場合は、造園業者などに作業を依頼することになります。広さや作業内容によって異なりますが、一回の依頼で数万円の費用がかかり、これを年に数回行う必要があるため出費を覚悟しなければなりません。
空き家は人が住んでいる家よりも早く老朽化が進行するといわれています。空気が滞留することで湿気が溜まりやすくなり、カビや木材の腐朽が一気に進んでしまうからです。維持費の中には、こうした経年劣化に対応するための修繕費用もあらかじめ組み込んでおく必要があります。屋根や外壁は雨風や紫外線の影響を直接受けるため、数年に一度は塗装の塗り替えやひび割れの補修が求められます。また、台風や大雪などで屋根瓦が飛んだり窓ガラスが割れたりといった突発的な被害を受けた場合には、早急に数十万円規模の修繕費を用意しなければなりません。修繕を怠ると建物の資産価値が急激に下落するだけでなく、倒壊のリスクも高まるため妥協できないポイントです。
適切に管理されていない空き家は、野生動物や害虫にとって絶好の住処となってしまいます。とくに恐ろしいのがシロアリによる被害です。湿気が多く薄暗い床下はシロアリが繁殖しやすく、気づかないうちに建物の柱や土台を食い荒らされてしまうことがあります。シロアリの被害が進行すると建物の耐震性が著しく低下し、最悪の場合は少しの地震でも倒壊してしまう危険性があります。また、ハクビシンやネズミが屋根裏に住み着き、糞尿による悪臭や建材の腐敗を引き起こすこともあります。これらの被害を防ぐためには、数年ごとの定期的な防蟻処理や、害獣の侵入経路を塞ぐ工事が必要です。もしすでに被害が発生してしまっている場合は、大規模な駆除費用と修繕費用が重くのしかかります。
維持費を節約しようとして空き家の管理を怠り、そのまま放置し続けることは絶対に避けるべきです。なぜなら、倒壊の危険があったり著しく衛生状態が悪かったりする空き家は、自治体から特定空き家に指定されるリスクがあるからです。特定空き家に指定され、自治体からの改善勧告に従わなかった場合、土地の固定資産税を大幅に軽減してくれていた特例が解除されてしまいます。この特例が適用されなくなると、土地の固定資産税は最大でこれまでの六倍にまで跳ね上がり、都市計画税も最大で三倍になります。維持費を惜しんだ結果、かえって膨大な税金を支払う羽目になるという事態を招きかねません。ペナルティを回避するためにも、適正な管理と維持費の支出は必要不可欠なのです。
特定空き家に指定された後も改善が見られず、近隣住民への危険が切迫していると判断された場合、最終的には自治体によって強制的に建物が解体される行政代執行が行われることがあります。行政が代わりに解体してくれるからラッキーだと勘違いしてはいけません。行政代執行にかかった高額な解体費用は、すべて空き家の所有者に全額請求されます。自分で解体業者を探して依頼するよりも割高な費用になることが多く、数百万円から一千万円を超える請求が来ることもあります。もし支払いに応じない場合は、所有者の預貯金やその他の不動産などの財産が差し押さえられるという非常に厳しい措置がとられます。空き家の放置は、最終的に自身の生活基盤すら脅かす経済的破綻のリスクを孕んでいます。
これまで解説してきたように、空き家を所有し続ける限り、多額の維持費と管理の手間、そしてさまざまなリスクがつきまといます。将来的にその空き家に自分や親族が住むという明確な予定がないのであれば、早急に何らかの対策を講じることが最善の選択といえます。もっとも確実な方法は、不動産会社を通じて空き家を売却し、手放してしまうことです。売却できれば維持費は完全にゼロになり、まとまった現金を手に入れることができます。建物が古すぎて売れない場合は、思い切って更地にしてから売却するか、あるいは駐車場や賃貸物件として活用し、維持費を上回る収益を生み出す資産へと転換する方法も考えられます。維持費の負担に押しつぶされる前に、専門家に相談して適したな出口戦略を見つけましょう。
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